【第5章】 ドライフルーツの製造方法

フルーツのほとんどは、80%~90%の水分が含まれているため、この水分は「蒸発する水分=自由水」と、「タンパク質や多糖類と結合している=結合水」に分かれているのですが、前者である「自由水」を脱水させることで、ドライフルーツができるというわけなのです。
くだもの製造方法には主に次のようなものがあります。・天日干し・機械乾燥(温風乾燥機など)・浸透圧による脱水・フリーズドライなど。下記ではそれぞれの製造方法について詳しく説明します。

≪天日干し≫
天日干しとは、直接太陽の光に当てて干すことで乾燥させる方法です。日本の気候では、このドライフルーツの作り方をするにあたり限界があります。しかし、我が国の気候においても天日干しに適する果物もあり、干し柿や梅干しはその代表的な素材です。

一般的に流通しているドライフルーツで天日干しのタイプは衛生面の問題(一般流通的観点から考慮した衛生面で、機械乾燥と比べると一般細菌数など多くなる傾向があります。)もあり、ほとんどありません。最近ではご家庭で気軽に乾燥食材を作る乾燥ネットなども安価で販売されています。

干し柿dried persimmon

≪機械乾燥(乾燥機)≫
一般的に流通しているドライフルーツのほとんどが機械乾燥を採用しています。トレーにフルーツを乗せ、電機やガスで温風を送り込み循環させて乾燥させる方法です。大量に一定の条件で乾燥できるため品質のバランスがとりやすく、衛生的な製造方法です。機械乾燥にもさまざまなタイプがあり、熱風乾燥、減圧乾燥、マイクロ波乾燥、真空凍結乾燥(フリーズドライ)、など乾燥の方法により食感や味わいが変わります。最近では簡単な仕組みの温風を送り込む家庭用の乾燥機(ディハイドレーター)も数千円~数万円程度で販売されています。

4機械乾燥

≪浸透圧による脱水≫
浸透圧による脱水とは、浸透圧効果のある砂糖等を利用して自由水を脱水する方法です。最終的には乾燥機を利用しますが、保存性の高い方法です。

砂糖に限らず、塩などには食品を漬けておくと水分とそれ以外を分離させる働きがあります。 砂糖水や塩水の濃度が濃いほど、その分離させる働きが強くなります。

浸透圧による脱水

≪フリーズドライ≫
フリーズドライとは、真空凍結乾燥という加工方法です。マイナス30℃で急速冷凍させ、一気に圧力を下げ真空状態にして、水分を昇華(乾燥)させる技術です。食品に含まれる水分量が極端に低いので、酵素や微生物の作用を抑制することができます。そのため、不要な添加物を使わずに長期保存することが可能です。天日干しや浸透圧による脱水などと比べると、もともとの素材の味、色彩に近い状態で自由水を脱水させることができます。乾燥による栄養破壊を防ぐ利点があります。

フリーズドライ

第5章のまとめ
世界最古の加工食品ドライフルーツの進化が理解できたと思います。よりおいしくより衛生的に製造するために、さまざまな技術を駆使して発展した乾燥方法、今後の発展も楽しみですね。

※ドライフルーツ豆知識・・・基本的には収穫時期にしか製造できないドライフルーツ(糖漬けしない場合)ですが、一部のフルーツは冷凍果実からもドライフルーツにすることが可能です。比較的水分が少なく解凍時に離水しないフルーツです。あんずなどは冷凍ドライが可能なフルーツの一つです。